英語の本を読みたい。でも、どこから始めればいいのかわからない——。
多読に取り組み始めたころ、ぼくはこうした悩みを抱えていました。
フィクションの世界で物語に浸るのも素敵ですが、ノンフィクションには静かに、深く事実と向き合う時間があります。誰かの人生をたどることで、自分の生き方に輪郭を与えることにつながったり、目の前の悩みにそっと光をあててくれるような言葉に出会えたりすることも。
自分なりに多読を積み重ねて思うのは、自分の「読みたい」という感情に素直になることが大切だ——ということです。難易度はもちろん重要だけれど、多読というのは結局、読書という娯楽なのですから、楽しくなければ続きません。勉強という意識は脇に置いておいて、「楽しさ優先」「面白さ優先」で取り組めば、知らない単語や複雑な英文にもポジティブに向き合うことができます。
この記事ではそのような観点から、心に残る読書体験ができるノンフィクション洋書を、ぼくの読書歴の中から厳選してご紹介します。中には少しチャレンジングな難易度のものもありますが、内容はどれも心に深く響くものばかり。
英語学習の一歩を踏み出す方にも、静かな読書の時間を求めている方にも、このリストが多読のお供になりますように。
※本記事では「ノンフィクション」の洋書を紹介します。フィクション編はこちらをご覧ください。

この記事を書いた人
ヒラク
NOT KNOWING JOURNAL 運営・執筆
早稲田大学 政治経済学部 政治学科
→ 総合医療機器メーカー
→ フリーランス
The Boy Who Harnessed the Wind (Y.R.Edition) — 少年の挑戦と希望の物語
著者 ▶ ウィリアム・カムクワンバ
肩書 ▶ 発明家
頁数 ▶ 313ページ
分類 ▶ 自伝・技術革新
難度 ▶ ★☆☆(星1つ)
初版 ▶ 2010年
評価 ▶ ☆ 4.7(amazon)
書籍情報
マラウイの小さな村に暮らす少年ウィリアム・カムクワンバ。干ばつと貧困により学校に通えなくなった彼が、図書館で偶然見つけた科学の本を手がかりに、独学で風力発電機を作りあげた実話です。
このヤングリーダーズ版は、通常版と比べて 文章がやさしく、構成も整理されている ため、英語多読の初心者にとって非常に読みやすくなっています。語彙も中学校レベルが中心で、やや長めの文章に慣れたい方に最適です。
さらに、希望・工夫・学ぶ力・家族愛といった普遍的なテーマ が感動的に描かれており、「英語を読むこと」がそのまま「心を動かす体験」に変わっていく 1冊です。
ここがおすすめ!
✅ ヤングリーダーズ向けに平易な英語で書かれており、読みやすい
✅ 実話に基づいた物語なので、内容の理解がしやすく感情移入しやすい
✅ 環境・教育・発明といったテーマが、自然に英語で学べる
✅ 読むことで「希望とはなにか」を感じられる力強い一冊

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Tuesdays with Morrie — 人生で本当に大切なこと
著者 ▶ ミッチ・アルボム
肩書 ▶ 作家
頁数 ▶ 218ページ
分類 ▶ 人生哲学
難度 ▶ ★☆☆(星1つ)
初版 ▶ 1997年
評価 ▶ ☆ 4.6(amazon)
書籍情報
著者 ミッチ・アルボムが、大学時代の恩師 モリー・シュワルツ教授と再会し、ALS(筋萎縮性側索硬化症)という難病を患う彼と毎週火曜日に語り合った記録。それは 人生最後の授業 となり、死を目前にしたモリーが語る「生きる意味」が、静かに、しかし力強く紡がれていきます。
本書はノンフィクションでありながら、会話形式が中心のため読みやすく、文法や語彙も比較的平易です。2人の語り口は優しく、ユーモアを交えながら進むため、多読初心者にとっても理解しやすい英語 になっています。
同時に、愛、仕事、家族、死、そして「人生とは何か」という普遍的なテーマ が、一つひとつ丁寧に語られており、読後には心が温かくなるだけでなく、静かな問いが胸に残るでしょう。
まさに、英語を「読む」ことを通して、「人生を考える」時間 をもたらしてくれる1冊です。
ここがおすすめ!
✅ 会話文が多く、文法もやさしく自然な口語表現が中心
✅ 短い章ごとに内容が区切られていて、少しずつ読み進めやすい
✅ 感情のこもった言葉が多く、英語の “ことばのぬくもり” に触れられる
✅ 読むことで、人生について深く思索する時間が得られる

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Steal Like an Artist — 創造の本質は「まねること」にある
著者 ▶ オースティン・クレオン
肩書 ▶ 作家
頁数 ▶ 174ページ
分類 ▶ 創造性・自己啓発
難度 ▶ ★☆☆(星1つ)
初版 ▶ 2012年
評価 ▶ ☆ 4.6(amazon)
書籍情報
「創造的であることは、まったく新しい何かを生み出すことではない。むしろ“うまく盗む”ことから始まるのだ」—— そんな逆説的なテーマから始まる、コンパクトで刺激的な一冊です。
著者のオースティン・クレオンは作家であり、ビジュアルアーティスト。本書では「創造性とは何か」「どうやって自分だけの表現を見つけるか」といった問いに、簡潔で軽やかな言葉で向き合っています。
英語は非常にシンプルで、1章ごとの分量も少なく、見開きの図解や手書き風のレイアウトが随所に配置されています。辞書を引かずにスラスラ読めるうえ、たくさんの “ことばの金言” が詰まっており、多読初心者にも強くおすすめできる1冊です。
「読みながらメモをとりたくなる」ような読書体験 を求めている方に、ぴったりです。
ここがおすすめ!
✅ 英語が非常に平易で、シンプルなセンテンスが中心
✅ イラストや図解も豊富で、視覚的にも楽しく読める
✅ 創造性、表現、自分らしさに関する普遍的なテーマが刺激になる
✅ 多読に「遊び心」と「自分らしさ」を加えてくれる一冊

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Essentialism — 人生をシンプルにする教え
著者 ▶ グレッグ・マキューン
肩書 ▶ 作家
頁数 ▶ 290ページ
分類 ▶ 自己啓発
難度 ▶ ★★☆(星2つ)
初版 ▶ 2014年
評価 ▶ ☆ 4.5(amazon)
書籍情報
個人的に今回紹介する中で、最も影響を受けたのが本書。「より少なく、しかしより良く」を追求する生き方を提唱する内容で、日々の雑多なタスクや情報に溺れがちな現代人に向けて、真に重要なことに集中する術を伝えます。
全体を通してシンプルな英語が用いられている印象で、豊富な具体例と実践的なアドバイスを通して、エッセンシャリズム(本質主義)の哲学 がわかりやすく解説されています。中にはやや難しい英文も含まれますが、論理的にまとめられているため、多読初心者の 読解力や英語力の向上 にも役立ちます。
読むほどに、自分の時間とエネルギーの使い方を見直し、心のゆとりと充実感を育むヒントが得られる一冊です。
ここがおすすめ!
✅ 明快で具体的な英語表現で書かれており、多読初心者にも読みやすい
✅ 本質に絞った考え方が、仕事や生活の効率化に直結する実践的内容
✅ 章ごとにテーマが区切られ、少しずつ読み進めやすい構成
✅ 英語の文章から学びつつ、自分のライフスタイルを見つめ直せる

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The Slight Edge — 毎日の小さな選択が、人生を変える
著者 ▶ ジェフ・オルソン
肩書 ▶ 作家
頁数 ▶ 301ページ
分類 ▶ 自己改善
難度 ▶ ★★☆(星2つ)
初版 ▶ 2011年
評価 ▶ ☆ 4.7 (amazon)
書籍情報
自己啓発書として長年愛され続けるロングセラー。著者のジェフ・オルソンは、起業家・講演家としても知られ、成功や幸福は「小さな選択と習慣の積み重ね」で成り立つ と説きます。目新しいテクニックではなく、日々の暮らしの中にある「シンプルだけど継続が難しいこと」に光を当てた一冊です。
文体はやさしく、語りかけるようなトーン。英語力に不安のある方でも、スムーズに読み進められます。反復や具体例も多く、意味が取りやすい点も英語多読向き です。
読み終える頃には、「大きな一歩」より「毎日の小さな一歩」を信じられる ようになるでしょう。静かに、でも確かに心に残る、誠実な成功論の一冊です。
ここがおすすめ!
✅ 語彙や表現がやさしく、英語初中級者でも理解しやすい
✅ 実体験に基づいたストーリーが多く、イメージしながら読み進められる
✅ 成功哲学が具体的で、読者の実生活においても即効性がある
✅ セルフヘルプ系にありがちな誇張が少なく、等身大の内容

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This Is Water — 日常に潜む「考える力」を呼び覚ます
著者 ▶ デヴィッド・フォスター・ウォレス
肩書 ▶ 作家
頁数 ▶ 155ページ
分類 ▶ 思考・哲学・教養
難度 ▶ ★★☆(星2つ)
初版 ▶ 2009年
評価 ▶ ☆ 4.6(amazon)
書籍情報
2005年、アメリカの名門ケニオン・カレッジの卒業式。その壇上で、デヴィッド・フォスター・ウォレスは、いわゆる「成功論」や「人生訓」とは一線を画す、静かで、鋭く、そして深く心に刺さるスピーチを語りました。
「本当の自由とは、何を考えるかを “選び取る” 力のことだ」「目の前にある “水” に、気づくことができるか」
水に気づかない魚のように、私たちは 当たり前の空気の中で無自覚に生きている。そのことに気づくということが、「本当の教養」なのだと、静かな語り口で伝えてくれます。
英語としては比較的わかりやすく、日常語が中心。ただし、短い中にも文のリズムや比喩、論理の重ね方に独自の味があり、英語で「思考する」体験をしたい方 におすすめです。ページ数も少なく、多読初心者にとっては「深くて軽い」読書体験 を味わえる稀有な一冊です。
ここがおすすめ!
✅ 分量が少なく、集中力を保ちやすい
✅ 日常的な語彙で書かれており、内容の深さと読みやすさを両立
✅ 思考・自由・日常へのまなざしが学べる、哲学的な英語
✅ 英語で読みながら、自分自身の思考が広がっていく実感を得られる

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Educated: A Memoir — 学びと自立の物語
著者 ▶ タラ・ウエストオーバー
肩書 ▶ 著作家
頁数 ▶ 336ページ
分類 ▶ 自伝・教育
難度 ▶ ★★☆(星2つ)
初版 ▶ 2018年
評価 ▶ ☆ 4.6(amazon)
書籍情報
アイダホ州の山奥で、教育を受けずに育った少女タラ・ウエストオーバー。宗教的原理主義の家庭に生まれ、病院にも学校にも行かずに育った彼女が、16歳で初めて教室に足を踏み入れ、やがてケンブリッジ大学、ハーバード大学へとたどり着く——本書は、その劇的な半生を自ら綴った自伝的ノンフィクションです。
英文はシンプルながら、文法的には中級者向け。ただ、彼女の表現は明晰で、情景描写や感情の機微が丁寧に描かれている ため、慣れてくると物語の力に引き込まれて一気に読み進められます。
本書は「教育とは何か」「家族とは何か」「自分の人生をどう選び取るか」といった深い問いを投げかけてきます。多読の目的が「語学力」だけでなく、「自分自身と向き合うこと」でもあるのなら、この本は強い味方になってくれるでしょう。
ここがおすすめ!
✅ 自伝形式でストーリー性が強く、先が気になって読み進めやすい
✅ アメリカという国の、知られざる一面を垣間見ることができる
✅ 家族・信仰・教育という普遍的で深いテーマに触れられる
✅ 著者の「世界を切り開く力」を直接的に感じ取ることができる。

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The Sense of Wonder — 自然へのまなざしを育むエッセイ
著者 ▶ レイチェル・カーソン
肩書 ▶ 生物学者
頁数 ▶ 108ページ
分類 ▶ 自然・環境エッセイ
難度 ▶ ★★☆ (星2つ)
初版 ▶ 1965年
評価 ▶ ☆ 4.6(amazon)
書籍情報
本書は、『沈黙の春』で知られる生態学者・作家のレイチェル・カーソンが、晩年に綴ったエッセイです。彼女が姪のロジャーと自然の中で過ごした時間をもとに、「驚きと感動を失わない目で世界を見ること」の大切さを、詩のような文体で描いています。
英語としてはごくシンプルで、文章量も少なめ。けれど、その一文一文に深い静けさと慈しみが宿っています。難解な単語や文法はほとんど登場せず、多読初心者にとって「自然の美しさと言葉の響きの両方を味わえる」貴重な体験になることでしょう。
本書は子どもに語るような口調で書かれているため、英語のリズム感やナチュラルな語り口 に触れたい方にもぴったり。忙しさに追われる日常のなかで、ふと足を止めるきっかけを与えてくれる一冊です。
ここがおすすめ!
✅ ページ数が少なく、文体も平易でやさしい
✅ 美しい自然描写と静謐な文章で「読む喜び」を体感できる
✅ 自然へのまなざしを通して、心を整える読書体験ができる
✅ 英語多読における“心の滋養”として、繰り返し読みたくなる
What I Talk About When I Talk About Running — “走る”と“生きる”の関係
著者 ▶ 村上春樹
肩書 ▶ 作家
頁数 ▶ 194ページ
分類 ▶ 自伝的エッセイ
難度 ▶ ★★☆(星2つ)
初版 ▶ 2007年
評価 ▶ ☆ 4.4 (amazon)
書籍情報
村上春樹が自らのランニング生活と、小説家としての日常を重ねながら綴ったエッセイ。タイトルはレイモンド・カーヴァーの短編集『What We Talk About When We Talk About Love』のパロディでもあり、著者らしいユーモアと文学へのリスペクトがにじみます。
走るという行為を通して、集中・習慣・孤独・衰え・継続といったテーマ が静かに語られており、「走ることについて語ること」が、次第に「生きることについて語ること」へと変わっていきます。
英語版は、村上自身の日本語原稿をもとにフィリップ・ガブリエルが翻訳したもので、文体は自然な印象。多読初心者にも読みやすい構造となっており、ストーリー性よりも エッセイ的な心地よさ、内面との対話を味わいたい方 に適しています。
ぼく自身はこれまで、村上作品には触れてこなかったのですが、彼の走ること、書くこと、生きることに対する向き合い方は本当に参考になる点が多かったです。
ここがおすすめ!
✅ 平易で口語的な文章が中心。多読初心者にも無理なく読める
✅ ランニングと人生、創作との関係を語るシンプルなエッセイ
✅ 英語で“考える”静かな時間を与えてくれる
✅ 翻訳ながら分かりやすさがあり、英語らしい表現に慣れる練習にも◎

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A Walk in the Woods — 自然とユーモアあふれる旅の紀行エッセイ
著者 ▶ ビル・ブライソン
肩書 ▶ 作家
頁数 ▶ 305ページ
分類 ▶ 旅行記・自然紀行
難度 ▶ ★★★(星3つ)
初版 ▶ 1998年
評価 ▶ ☆ 4.4(amazon)
書籍情報
全長約3,500km、アメリカ東部を縦断するアパラチアントレイル。この過酷な自然の道を、著者ビル・ブライソンが気の合わない — けれど憎めない — 友人カッツとともに歩いた記録が、本書です。
内容は旅のエッセイでありながら、ユーモアと知性に満ちており、山道での失敗談や自然への驚嘆、アメリカ史や環境問題の小話など が絶妙に織り込まれています。
英語としてはやや語彙豊富で、中級者向けの読みごたえがありますが、ブライソン独特の軽妙な語り口とテンポのよい文章により、多読を楽しむにはぴったりの1冊。辞書を片手にじっくりでも、エピソードごとに気楽に読んでも味わえる本です。
「英語で笑い、英語で考え、英語で自然に出会う」—— そんな読書体験を探している方におすすめしたい作品です。
ここがおすすめ!
✅ ユーモアに富んだ文章で、“英語で笑う” という体験ができる
✅ 旅・自然・歴史・環境など、多様な話題に英語で触れられる
✅ それぞれのエピソードが独立していて、気楽に読み進めやすい
✅ 中級レベルでも、面白い本にはどんどんチャレンジするという経験を積める

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—— たくさんの本に出会っていくには、電子書籍というかたちもひとつの選択肢かもしれません。
特に Amazon Kindle Unlimited では、さまざまな英語の物語に月額で触れることができます。
ぼく自身もこのサービスを使って読書の幅が大きく広がりました。
まとめ — 英語と、自分自身と、静かに向き合う読書の時間

ノンフィクションには、誰かの経験や思索を通じて、自分の生き方を静かに見つめ直す力があります。英語でそれを読むという行為は、語学の学びを超えて、自分の内面と向き合う時間にもなるのです。
今回紹介する洋書を選ぶうえで意識したのは、読み物として面白くてためになるものをチョイスするということ。それぞれが「読みごたえ」のある、確かな一冊ばかりだと思います。
ただ言葉を追うだけでなく、そこに込められた人生の声に耳を澄ますことで、英語は単なるスキルではなく、世界とつながる静かな扉になります。
このリストの中から、あなたの心に触れる一冊が見つかりますように。そしてその一冊が、あなた自身の「問い」や「学び」の旅へと、そっと導いてくれることを願っています。
📬 ことばが、どこかであなたに触れたなら──
小さな便りをお寄せいただけたら、とても励みになります。